「あッ、こんにちは、久しぶりだね」 その声に心臓があぶった。
「バクバクッ、バクバクッ」
心音が漏れやしないかと心配した。
いつものスーパーマーケット、いつも通り日常的な風景の中で、ここ一番会う準備ができていなかった人物と再会してしまった。
元妻との偶然の再会だった。
食事の買い出しに奔走するがあまり、まったくの不意をつかれてしまった
止まっていたはずの時計が、一瞬で音を立てて動き出したのがわかった。
1. 再会、そして目一杯の強がり

いつも通り、節約を意識しながらカゴを手にしていた時のことだ。
声をかけてきた彼女は、驚くほど自然だった。
職場の都合でこの近くに住んでいるらしく、表情は驚くほど穏やかで、幸せそうに見えた。
対する私はどうだっただろうか。 内面の動揺を悟られないよう、精一杯「平穏な日常を過ごしている男」を演じた。
「久しぶりだね、元気そうでよかった」 そんな短い挨拶を返すのが精一杯。
もしも私が先に気づいていたら、きっと見つからないようにその場を退散していただろう。
彼女の迷いのない明るさ、僕が知っていた彼女の笑顔とはどこか違う輝きに見えた。
そんな私の余裕は、まさに「渾身の演技」で保たれていた。
2. 20年という月日の重さと、よぎる後悔
別れてから、彼女には未練の欠片も感じられなかった。 その潔いまでの強さを目の当たりにしたとき、心の奥底がざわつき、沈めていた「悔い」を痛感した。
「この20年の結婚生活は、彼女にとって苦痛でしかなかったのだろう」
今さらどうしようもない自問自答が、刹那(せつな)さとなって込み上げる。
彼女の今の幸せは喜ばしいこと。それなのに、その幸せのなかに「自分が居なかったこと」を突きつけられ何とも言えないやるせない感覚。
「情けない、嫉妬なのか」・・・・
悔しいけどまぎれもなく後悔だった
3. 女性の強さと、僕の「再出発」
女性の切り替えの早さと強さには、改めて脱帽するしかない。
彼女はもう、過去ではなく「今」を生きている。 いつまでも過去の残像に囚われ、修復をどこかで願っていたのは、私だけだったのだと思い知らされた。
しかし、この再会は残酷なだけではなかった。
彼女の笑顔は、私たちが出した「別れ」という答えが、少なくとも彼女にとっては正解だったのだと再度通告になった。
結び:苦笑いとともに、また明日へ

スーパーからの帰り道、自転車のハンドルを握りながら、思わず苦笑いが出た。
いつまでも過去に縛られている自分が悔しかった。
あんなに練習している自炊も、積み上げている資産運用も、今の彼女の前では何の意味も持たない。
それでも、私は私の人生を、この街で続けていく。 渾身の演技で塗り固めた再会だったけれど、次に会うときは、演技抜きで「元気だよ」と言えるようになりたい。
薄暗い帰り道、「明日の晩御飯、お肉にしようかな」そんなことを考えながらペダルを漕いだ
夕飯の味は全くしなかったが、噛み締めながら、それでもなんとか前を向けている自分をほめてやった。
「よくやってる、頑張ってるよ」って・・・
お布団に入りなかなか寝付けないかと思いきや爆睡だった。(笑)
僕だけかな、皆さんはこんな未練がましいくグジグジしてないですよね?
今回は後ろ向きの話になってしまいました
番外編
最後までありがとうございました。


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